修復物と歯の評価する際、試料をレジンに包埋し、これを切断した部分の観察を行う方法が一般的に用いられている。しかし、この方法は試料を調整する手間がかかり、切断した一面の評価しか行えないなどの問題点がある。そこで、試料を破壊せずに観察できれば歯や修復物の連続的な評価ができると考え、マイクロフォーカスX線CT装置の応用を試みた。 歯根と歯髄を除去したウシ前歯の唇側面に、直径4mm、深さ2mmの円柱状窩洞を形成しグラスアイオノマーセメント(フジアイオノマータイプIILC、GC)およびコンポジットレジン(クリアフィルAP-X、クラレ)を通法に従い充填した。充填後の試料は水中保管により吸水飽和したグループと、シリカゲルにて一週間乾燥保管したグループに分類し、マイクロフォーカスX線CT装置MCT-CB100MF(日立メディコ)を用いて歯と修復物の評価を行った。 その結果、グラスアイオノマーセメントおよびコンポジットレジンともに、吸水飽和したグループでは接着界面の状態は良好であったが、乾燥保管したグループでは窩壁周囲のギャップや修復物の亀裂などが観察された。これらの結果より、歯および修復物の非破壊的な観察が可能と考えられた。またマイクロフォーカスX線CT装置は、試料全体を計測するために水平方向や垂直方向の連続データを得ることが可能である。従って、多数のCT画像を連続的に表示することや、3D画像を用いた立体的観察も可能である。 現在、光照射条件の違いが接着界面や重合の程度に及ぼす影響を検討するために実験を継続中である。
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