研究概要 |
窩洞に充填した接着性修復物の評価を行うために、X線マイクロCT装置MCT-CB100MF(Hitachi Medico)の応用を試みた。はじめに牛歯に形成した円筒窩洞にコンポジットレジンとグラスアイオノマーセメントを各々充填しX線マイクロCT装置MCT-CB100MFで診査したところ、乾燥状態において充填物と歯質の間に数十ミクロンの間隙と充填物内部に亀裂が生じているのが観察できた。 そこで、歯根および歯髄を除去後に冷凍保管したウシ前歯唇側面に形成した直径4.6mm、深さ2.6mmの円柱状窩洞にコンポジットレジン(CLEARFIL AP-X:A3,KURARAY)を充填し、コンポジットレジン内部の縦断面データをMCT-CB100MFにて計測したところ、光照射前後で明らかなアウトラインの変化と充填操作により混入したと思われる気泡が多数認められた。気泡の混入は材料の強度低下はもとより、臨床成績に大きく影響を及ぼす可能性がある。特に、齲蝕が深部にまで及ぶ症例に充填を行うような場合、窩洞は深くなるので積層充填を行うことになる。充填回数が増えれば、気泡が混入すると考えられる。今回は気泡に着目し、臨床に近い条件で充填を行った際にどの程度の気泡が混入するのかを検討した。 人工歯として右上第一大臼歯2級CRインレー窩洞(A5AN-164E、ニッシン)を用いた。上顎顎模型に人工歯を装着後、マトリックスリテーナーおよびメタルバンドを用いて通法通り充填を行った。術者は臨床経験の浅い卒後1年目の術者と、臨床経験20年以上のベテランの術者2名とした。用いたレジンはCLEARFIL AP-X(A3,KURARAY)とXRV HERCULITE(A3,Kerr)の2種類とし、各々5試料作製した。充填方法については特に指示はせず、普段通りの各自の方法にゆだねた。 各術者の術式を観察すると、卒後1年目の術者にはコンポジットレジンペーストの窩洞内への填入回数が多く、とくに咬合面の形態付与を何度もやり直す傾向が多いため、要する時間は長時間であった。一方、ベテランの術者のハンドリングはスムーズで、一歯あたりの充填に要する時間ははるかに短かった。 充填、光照射の終了した試料は、MCT-CB100MFにて内部の断面データ計測を継続中である。
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