平成15年度の研究計画は、無歯顎の被験者を用いて、平成14年度に開発したセンサを用いて上下顎全部床義歯の動揺量、衝撃力を計測し検定を行うことである。被験者は東京医科歯科大学義歯科に義歯の維持・安定の不良を主訴に来院した患者様にインフォームドコンセントを行い、実験の趣旨に同意した6名を用いた。口腔内はKapurの指数で平均14.3で中等度、旧義歯は平均6.7で普通、新義歯は平均9.5で良好であった。実験は新旧上下顎全部床義歯に3種の条件(Control:塗布しない、U:上顎のみ塗布、UL:上下顎両方に塗布)でクリームタイプの義歯安定剤を塗布して、かみごたえの異なるピーナッツ(1粒)、カマボコ(10×10×10mm)、レーズン(2粒)を咀嚼させ、義歯の動揺量、回転量および咀嚼機能を測定し、義歯安定剤の効果を検定した。その結果、以下の結論を得た。 1.義歯安定剤を塗布すると新旧義歯とも義歯の動揺量は減少する傾向を示した。すべての食品間で新旧義歯にその効果に有意差は生じなかった。 2.同様に義歯安定剤を塗布すると新旧義歯とも義歯の回転量は減少する傾向を示した。すべての食品間で新旧義歯にその効果に有意差は生じなかった。 3.3種の義歯安定剤の塗布条件下で、各咀嚼周期に優位差は生じなかった。 4.上下顎義歯に義歯安定剤を塗布すると優位に咀嚼時間が減少した。 5.以上の結果より、義歯安定剤は義歯の動揺量と回転量を減少させ、咀嚼機能の向上に有効であることが示唆された。
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