研究概要 |
実験目的:純チタンの臨床応用については多くの報告があるが,歯磨剤によるブラッシングがチタン表面の性状に及ぼす影響はよくわかっていない.本研究ではブラッシングしたチタン表面の形態的および化学的性状を精査する.実験方法:第2種チタンインゴット(Grade 2,GC)を鋳造し,35×15×1.5mm^3の板状試験片を作製して鏡面研磨した.2種類の歯磨剤,エチッケトライオン(ETL)(サンスター)とニューソルトA(NSA)(ライオン),を蒸留水でスラリーにし(15g/30ml),ブラッシング試験に供した.鏡面研磨した試験片をスラリーとともにブラッシング摩耗試験機(K706,東京技研)にセットし,250gの力を作用させて,120回/分の速さで350,400回ブラッシングした.これは,2分間のブラッシングを毎日2回2年間続けたことに相当する.なお,半分の回数ごとに新しい歯ブラシ(デントEX,33 soft,ライオン)に交換した.ブラッシング面の形態観察と元素分析には電子線マイクロアナライザー(EPMA-8705-HII,島津)を用いた.表面粗さ(Ra)を走査型プローブ顕微鏡で測定し(n=5),t検定にて群間の比較を行った.実験結果:ETLでブラッシングした面には,流れ星状のパターンが不規則に散見され,このパターンに対応して,点状に存在するSiと酸素が認められた.いっぽうNSAの場合は,細い平行線からなる線状痕が観察され,この状痕に沿って高濃度のCaとPが分布していた.ブラッシング面のRa値はコントロールに比して有意(p<O.01)に大きかった(コントロール:0.010±0.007μm, ETL:0.044±0.006μm, NSA:0.114±0.011μm).結論:ブラッシング面の面粗さと汚染は歯磨剤に含まれる研磨材に対応していた.
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