研究概要 |
咬合に病的な問題がないにもかかわらず咬合の遺和感を訴える患者において、咬合感覚異常に対する咬合感覚センサーの関与の可能性を検討することを目的として、上下顎歯間における厚さ弁別能試験を開発し、健常有歯顎者、高齢者、全部床義歯装着者、および咬合感覚異常患者を対象に、上下顎中切歯間、および上下顎小臼歯間における厚さ弁別能試験を行った。 開発した厚さ弁別能試験は、次のとおりである。試験には厚さ2,5,10mmのスタンダードブロック(SB)とSBから±0.25mmずつ厚さの異なる12種類のテストブロック(TB)を用いた。測定は、被験者にSBを上下顎歯間で軽くかませて除去し、約2秒後、同様にTBをかませ、TBがSBよりも厚くまたは薄く感じるかを答えさせた。厚いTBを薄い、薄いTBを厚いと答えた場合を誤答とし、誤答数について解析した。 上下顎中切歯間の厚さ弁別能について、20代の健常有歯顎者20名(男女各10名)対象とした実験では、以下のことが統計学的に証明された。 ・2,5,10mmすべてのSBの厚さにおいて測定法の再現性がみられた。 ・厚いTBは薄いTBよりも誤答しやすかった。 ・SBの厚さが厚いほど、誤答しやすかった。 ・厚さ弁別能に性差がみられた(2,5mmの薄いTBにおいて、女性の方が有意に多く誤答していた(P<0.05,リジット分析))。 これらの研究成果の一部は、国内外の学術大会で報告し、現在、学術雑誌(英文誌)に投稿中である。 また、咬合感覚異常者については、健常者と比較して誤答数が多い傾向がみられたが、決定的な閾値を設定するまでには至っていない。さらに、高齢者および全部床義歯装着者は、健常者と比較して誤答数が多い傾向がみられた。その他に、上下顎小臼歯間における厚さ弁別能は、中切歯間の結果と同様の傾向がみられるものの、誤答数が多い傾向がみられた。
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