高齢無歯顎総義歯装着群(平均74.9歳、男2名、女2名)における観察を行った。連続音(0.3Hz、1.3Hz)指令下顎タッピング運動、ランダム音信号指令下顎タッピング運動、音無拘束下顎タッピング運動の各条件下で、1〜30回目(ランダムは1〜129回)までの区間5回毎のタッピング時の手掌部発汗量、脈拍数、最大開口量を課題遂行時の緊張度の目安とした。 1.脈拍数(回/min.)は、無拘束(75.4)、1.3Hz(74.5)、0.3Hz(75.1)、ランダム(75.9)。 2.発汗量(mg/cm^2・min.)は、無拘束(0.222)、1.3Hz(0.165)、0.3Hz(0.107)、ランダム(0.171)。 3.最大開口量(mm)は、無拘束(9.9)、1.3Hz(8.5)、0.3Hz(9.2)、ランダム(7.6)。 4.継時的変化では、脈拍数は条件による変化なし。発汗量は、0.3Hzで継時的減少傾向がある他は変動が少ない傾向。最大開口量は、ランダムで全期間の半分くらいまで減少傾向、その後は微増傾向。 5.WHO QOL26において、身体的領域で平均3.1(標準偏差0.84)、心理的領域2.9(0.95)、社会的領域3.42(0.57)、環境領域3.44(0.24)、全体2.9(0.85)。 6.厚生労働省編一般職業適性検査において、運動共応能力平均44.8点(標準偏差11.0)、指先の器用さ39.5(19.2)、手腕の器用さ41.5(35.5)。 7.神経行動学的能力(今回は、手指手腕の巧緻性・運動共応能力)実際の衰えが見られる対象に対し、精神性緊張の度合いに関連する項目の継時的な変化が少ないという今回の結果は、高齢者の運動遂行時の戦略は、「予測」への依存度が少なく、各時点における事象を確認しながらのフィードバック調節を用いる部分が大きいというこれまでの推察に矛盾しないものとなった。
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