研究概要 |
歯科補綴分野においてセラミックス系材料は,優れた審美性,良好な生体適合性などの特性を有し,高い臨床的評価を受けている.しかし,脆性材料であるため,補綴物の破折,脱落などを引き起こしやすく利用範囲も限定されている.一方,金属材料は耐久性の点では最も優れているが,審美性の問題や,産出国の政治的な思惑による貴金属価格の乱高下など医療コスト面の問題も指摘されている.そこで我々は,セラミックスと金属両方の優れた特性を併せ持つ,セラミックス基複合金属材料の開発と歯科材料への応用に科研費の補助で取り組んできた.この方法は一般工業会では,Directed Metal Oxidation(DIMOX)法と呼ばれ,アルミニウム合金などの金属をアルミナなどのセラミックス中にある方向から浸透させながら同時に酸化反応を促進させることでセラミックスマトリックスを生成させるユニークな方法として知られている.これまで,一般にセラミックスは溶融金属に濡れにくいと考えられてきたが,新しいこのDIMOX法においては,適切な表面添加剤の応用,混合金属の融点付近での微妙な昇温制御,適切な加圧焼結操作を行うことで,金属の高いじん性とセラミックスの高い硬度および強度を併せ持つ優れた材料を作製可能であると期待されている.セラミックス材料として,平均粒径1μmと8μmのアルミナ粉末を,金属材料として,平均粒径25μmのアルミニウム粉末を用いた.作製された試料の理工学的物性は,市販されている従来の歯科用セラミックス材料と比較して,機械的強度は大きく,逆に表面硬度は小さくなる傾向を示した.また含有するアルミナ粉末の粒径やその組み合わせも理工学的物性に影響することが明らかになった.また特別な表面処理等は必要なく歯科用陶材の焼成も可能だと考えられ,有効な歯科修復用材料となる可能性が示唆された.
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