研究概要 |
材料と方法:ビーグル成犬(体重10〜12kg)の左右前頭洞を使用した。recombinant human Growth Differentiation Factor-5 (GDF-5)の担体として平均粒径300μmのβ-tricalcium phosphate (β-TCP)を使用した。rhGDF-5/β-TCP複合体はβ-TCPの1g当たりに対してrhGDF-5を500μgコーティングして作製した。前頭洞粘膜挙上部の作成は、従来のサイナスリフトの術式に準じて行った。右側前頭洞挙上部に2gのrhGDF-5/β-TCP複合体(rhGDF-5を1000μg含む)を滅菌生理食塩水に浸して移植した。対照側(左側)にはβ-TCPのみを滅菌生理食塩水に浸して移植した。移植後1,2,4,8,12,16週でビーグル犬を屠殺し、頭部灌流固定後、試料を摘出、ポリエーテル樹脂で包埋、薄切後、非脱灰研磨標本を作製した。前頭洞内の骨形成を塩基性フクシン・メチレンブルー重染色で組織学的に観察した。 結果:1週後の実験側は、既存骨に近い部分の顆粒間に幼弱な骨組織の侵入が観察された。2週後、実験側は既存骨と連続した骨組織が観察されるようになり、顆粒間への幼弱骨組織の侵入が、1週後のそれに比較して進行していた。β-TCPのみを移植した2週後の対照側は、顆粒間への幼弱骨組織の侵入を殆んど認めなかった。4週後、実験側は既存骨と接する周囲にこれと連続した骨組織の形成が観察された。対照側は実験側に比較して移植した顆粒と顆粒の間隔が狭く、凝集された状態が観察された。8週後、実験側は既存骨と連続した骨組織で満たされ、β-TCP顆粒の吸収は全体の中心部まで進行していた。対照側は、実験側と同様に既存骨と連続した骨組織の形成が認められるようになったが、顆粒の大半は吸収されずに残存していた。12週後の実験側は顆粒の吸収が進行し、rhGDF-5に誘導された骨は既存骨と連続し、梁状部分が太く発達していたが、8週後の実験側に比較して洞粘膜挙上量の減少が認められた。16週後の実験側は12週で観察された傾向の進展を認めた。対照側は顆粒の吸収が進行し、既存骨と接する部分に連続した形成骨が観察された。
|