本研究の目的は、現在使用されている金銀パラジウム合金と同等の耐食性ならびに時効硬化性を有し、かつできる限りパラジウム含有量を低減化した新しい歯科鋳造用金銀パラジウム合金を開発することである。 研究初年度である本年度は、(1)PdとCu含有量を低減化し、Au含有量を増加した25種類の実験合金、(2)Cuの代わりにInを20%配合し、Auを1〜12%含有したPdを含まないAg合金を5種類を作製し、それらの耐食性を0.1% Na_2S溶液中にて電気化学的手法ならびに分光測色法を用いて定量的に評価した。得られた知見を以下に示す。 (1)Cu含有量が10〜20mass%の範囲では、金銀パラジウム実験合金の耐食性に顕著なCu含有量依存性は見出されなかった。 (2)Auを15mass%含有する合金では、Pd含有量を15mass%としても、市販の金銀パラジウム合金と同等の耐食性を示した。 (3)Pd含有量が10mass%の合金では、Au含有量を40mass%としなければ、市販の金銀パラジウム合金と同等の耐食性を示さなかった。したがって、金銀パラジウム合金のPd含有量は、少なくとも15mass%よりも高くなければならないと結論できる。 (4)Auを1〜12mass%含有するAg-20In合金0.1% Na_2S溶液中浸漬し、色差(ΔE)の時間変化を求めた結果、Auを6mass%含有する合金の耐食性は、JISの第2種Ag合金よりも著しく高く、市販の金銀パラジウム合金と同等であることが明らかとなった。本合金は、Pdを含まない鋳造用Ag合金として有望であることが分かった。
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