研究概要 |
平成15年度は、Auを微量添加したAg-20-(1〜6)Au合金の耐食性を生理食塩水(0,9%NaCl溶液)ならびに硫化ナトリウム溶液(0.1%Na_2S溶液)中で評価することを目的とした。まず、電気化学的手法である動電位分極法や交流インピーダンス法を適用し、各合金の腐食挙動を調べた。また、合金表面に生成した腐食生成物をX線光電子分光法(XPS)で分析するとともに溶液中に溶出した金属イオンをグラファイトファーネス原子吸光法(AAS)で定量した。得られた知見を以下に示す。 (1)Ag-20In合金は、0.1%Na_2S溶液中では高い耐食性を示した。一方、0.9%NaCl溶液中では著しく腐食し、腐食生成物(In_2O_3)の生成にともなって、合金表面が灰黒色に変色した。 (2)0.9%NaCl溶液中における腐食電位と交流インピーダンスの測定から、Au含有量が高い合金ほど腐食電位は貴となり、腐食速度が小さくなることが明らかとなった。この結果から、1%と微量なAuの添加によって、Ag-20In合金の耐食性が著しく改善されることが分かった。 (3)Ag-20-(1〜6)Au合金の腐食反応は、アノード反応律速であった。また、Auを含有しないAg-20In合金では、卑な金属元素であるInの選択的な腐食が生じたが、1%以上Auを添加することによって、Inの選択腐食は著しく抑制された。 以上の結果から、Ag-20In合金に微量のAuを添加することによって、高い耐食性を有し、かつCuとPdを含有しない新しい歯科鋳造用Ag合金を開発できることが明らかとなった。研究最終年である来年度は、Ag-20-(1〜6)Au合金の組織を詳細に調べることによって、微量に添加されたAuがどのような機構で合金の耐食性を高くしているか解明するとともに、本合金を実用化するために、耐食性を含めた諸性質を改善する。
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