前年度までにAuを添加した4種類のAg-20In-(1〜6)Au合金の耐食性を生理食塩水(0.9% NaCl溶液)ならびに0.1%硫化ナトリウム溶液中で調べ、いずれの溶液中においても微量に添加したAuは合金の耐食性ならびに耐変色性を顕著に向上させることを明らかにした。研究最終年度である平成16年度は、Ag-20In-(1〜6)Au合金の生理食塩水中における腐食機構を調べ、微量に添加したAuが合金の耐食性を向上させる機構を明らかにすることを目的とした。得られた知見を以下に示す。 (1)いずれの合金においても、時間の経過とともに腐食電位は貴となり、腐食速度は低下した。したがって、Ag-20In-(1〜6)Au合金の腐食反応はアノード反応支配であることが明らかとなった。 (2)腐食前後における合金試料のX線回折測定から、腐食の進行とともにAg_3Inの回折ピーク強度が低下するこが分かった。したがって、Ag_3Inがアノードとなって選択的に腐食し、合金表面に結晶性のIn_2O_3を生成するとともに、In^<3+>を溶出しながら腐食することが分かった。 (3)Auの添加量の増大とともに合金組織中のAg_3Inの割合が減少するために、耐食性が高くなることが分かった。 以上の結果から、Auを微量添加したAg-In合金は口腔内での使用に満足する耐食性を有しており、PdとCuを全く含まない歯冠修復用合金として、金銀パラジウム合金の替りに使用できることが明らかとなった。ただし、本合金のビッカース硬さはおよそ120〜140であり、その機械的性質からインレーやクラウンなどの用途に使用は限定され、クラスプやブリッジには適用することが難しいものと考えられる。
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