研究概要 |
フェノール化合物は抗炎症作用、抗癌作用などの生物活性はフリーラジカル捕捉性と密接な関係している。今年度は、tert-butyl基を有するBHT(2,6-di-t-butyl-4-methylphenol)およびその生体内代謝産物;2,6-di-tert-butyl-p-benzoquinone(BHT-Q),3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzaldehyde(BHT-CHO),3,5-di-tert-butyl-4-hydroperoxy-4-methyl-2,5-cyclohexadiene-1-one(BHT-OOH)のラジカル捕捉性を、BPO-methylmethacrylate(MMA),AIBN-MMA重合系を用いる誘導期間法により検討した。Stoichiometric factor(1モルのフェノール分子当たり何個のラジカルを捕捉するか)を検討した結果以下の順になった。 BHT(1-2)>BHT-CHO、BHT-OOH(0.1-0.3)>BHT-Q(〜0).更に、初期重合速度より、各種フェノール化合物の連鎖成長反応速度の抑制率(inhibition rate constant, k_<inh>)を測定した。 k_<inh>値はBHT-Q(3.5-4.6×10^4M^<-1>s^<-1>)>BHT-OOH(0.7-1.9×10^4M^<-1>s^<-1>)>BHT-CHO(0.4-1.7×10^4M^<-1>s^<-1>)>BHT(0.1-0.2×10^4M^<-1>s^<-1>)であった。 BHT代謝産物のk_<inh>はBHTより大きかった。BPOによるMMA成長ラジカルはAIBNに比べより効率的に抑制された。BHTはchain-breaking-antioxidantであることが分かった。半経験的分子軌道法により、フェノール性OH基の解離エネルギーを算出した。この値はラジカル捕捉性と関連しており、ラジカル反応性、radical-radical相互作用に関連する、descriptorとなることが分かった。
|