研究概要 |
低温プラズマ(CP)による表面処理は,当教室試作のプラズマ発生装置を用い,初期電圧400V,電流密度0.2mA/mm^2の条件で,2種類の歯科用金属(チタン,金銀パラジウム合金)に対して行なった.接着試験のための被着面金属は,チタンではワイヤ放電加工法用い,金銀パラジウム合金では歯科鋳造法により10×12×2mmの試験片を作製し,エメリーペーパー#1200まで研磨を行い作製した.歯科用接着材として機能性モノマーのMDPを含むレジンセメントを用い,接着体に直径8mmのチタン棒を用いて被着面に接着させた.引張接着試験はインストロン万能試験機を用い,引張接着強さ(TBS)を測定した(n=5).また,CP処理後の被着面表層の反射電子組成像による観察を行った. 未処理のチタンとレジンセメントのTBSは6.4MPaであったが,CP処理を施したチタンのTBSは8.5MPaとなり,未処理の金銀パラジウム合金のTBSは2.0MPa, CP処理後では3.4MPaとなり,いずれもCP処理を施すことによりTBSの顕著な増加を生じることが認められた.また,チタンでは明瞭ではなかったが,金銀パラジウム合金ではCP処理による被着面表層の微細構造の変化が反射電子組成像から観察された.歯科用合金に対するCP処理は,高エネルギーのプラズマ条件を作ることにより,処理液による汚染のない清浄なプラズマエッチング面を容易に作成可能であることが認められた.また,歯科用合金に対するCP処理によるTBSの増加は,表面清浄,活性化だけでなく,微細構造の変化も関与していると考えられた.以上の結果から,歯科用合金に対するCP処理は歯科補綴物の接着性を向上させる有効な表面処理法であることが判明したため,来年度は歯科用機能性モノマーのCP処理後の被着面における接着構造変化を,高感度赤外反射分光分析法を用いて調査する予定である.
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