研究概要 |
前年度での人工根管モデルを作成した研究の結果、過酸化物の歯に対する影響が、過酸化物を主成分とした漂白剤では、過酸化水素を主成分とするものと過酸化尿素を主成分とするもので、大きな違いがみられた。そこで、過酸化物から発生する酸素ラジカルについて調べた。発生する酸素ラジカル種を推定するために、過酸化物を主成分とした漂白剤の成分と酸素ラジカルの発生系との関係について検討した。過酸化水素から発生が考えられる酸素種には、ヒドロペルオキシラジカルやヒドロキシルラジカルなどが考えられる。過酸化水素を化学分解や光分解して発生する酸素ラジカルの発生系には、1)Fenton反応による系2)Fenton様(類Fenton)反応による系、3)長波長紫外線・可視光線(UVA/Vis)照射による光分解系の3つが考えられる。この3つの反応系に関与するイオンとして、1)ではFe(11)(111)イオンの存在が必要であり、2)ではCuイオンやTiイオンの存在が必要となる。そこで漂白剤の成分にこれらの金属イオンが存在するかをX線マイクロアナライザ(XMA, EPMA)を用いて定性的に調べた。その結果、Cu, Mn, Feが、過酸化水素を主成分とする漂白剤の粉末成分に多く含まれていることがわかった。過酸化水素を主成分とする漂白剤は、可視光線照射器で照射されたUVA/Visにより光分解されるほかに、これらの遷移金属がFenton反応や類Fenton反応をおこすことにより分解され、酸素ラジカルを発生することが示唆された。一方、過酸化尿素では、pHが高いので過酸化水素が自動分解され、酸素ラジカルを発生することがわかった。さらに、前年度と今年度の研究から、漂白剤から癸生する酸素ラジカルは、これまでいわれていた、スーパーオキシドやその水和型であるヒドロペルオキシドではなく、ヒドロキシルラジカルであることが示唆された。
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