研究概要 |
無歯顎患者に対する総義歯補綴臨床では、咬合採得、特に水平的下顎位の決定は重要であり、機械的な水平的下顎位の決定法として、ゴシックアーチ描記法が広く臨床応用されている。本研究は、ゴシックアーチ描記の練習が無歯顎者の下顎位に及ぼす影響を明らかにする目的で、ゴシックアーチ描記時の下顎運動を6自由度顎運動記録装置で測定し、ゴシックアーチとタッピングポイントの定量的な分析が可能なシステムを開発した。 被験者は、事前に実験の主旨について十分な説明を受け、同意した20歳代の健常者3名を選択した。実験は、3つのLEDが三角形を成すように構成された2つのフレームを製作後、1つのフレームを上顎歯列弓,もう一方を下顎歯列弓に装着した。次いで、日本歯科大式ゴシックアーチトレーサーを装着後,6自由度顎運動記録装置K3DMS2システムを用いて下顎の前方ならびに左右側方への限界運動と毎秒3回のタッピング運動を記録し,データをコンピューターディスクに保存した。これらのデータから,ゴシックアーチとタッピングポイントの定量的な分析が可能なプログラムを開発した。プログラムの開発により,ゴシックアーチ描記時の下顎運動,また同時に,前方描記路と左右側方描記路の長さ,展開角,ゴシックアーチ描記路上へのタッピングポイントの重ね合わせ,10個のタッピングポイントの平均点,その位置座標,標準偏差,変動係数を表示することができた。この分析システムを用いることにより,ゴシックアーチ描記時とタッピングポイント記録時の下顎運動を観察すること、同時にゴシックアーチとタッピングポイントを定量的に評価することが可能になった。
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