私たちは変異Fgfr2が影響する主要な組織のひとつとして軟骨を仮説した。私たちはApert症候群型変異Fgfr2遺伝子(Apert-Fgfr2)を軟骨細胞に発現させたトランスジェニックマウスを用いた。それらのマウスは頭蓋底の成長点である軟骨縫合の早期癒合をきたし、頭蓋に限局した奇形を結果した。この奇形は軟骨縫合における軟骨細胞の肥大化の亢進、頭蓋底を形成する蝶形骨の前後的縮小と頭蓋底軟骨の厚みの減少を伴っていた。頭蓋に特徴的に現出する軟骨の異常の原因としてFGFファミリー分子の発現の特異性を仮定した。私たちは頭蓋の凍結切片からレーザーマイクロダイセクション(LMD)によって軟骨細胞を選択的に採取し、その遺伝子発現を検討した。その結果、Fgf2とFgf10が頭蓋の軟骨において特徴的に発現が見られた。 Apert-Fgfr2はこれらのFGF2とFGF1Oに対し親和性の増強が報告されており、トランスジェニックマウスでみられた頭蓋特異的奇形にFGFライガンドの分布が起因する可能性が示唆された。頭蓋底軟骨内におけるFGFR2シグナリング異常活性化がもたらす結果を分子レベルで解明することを目的にLMDとリアルタイムPCRを用いた遺伝子発現解析を進めている。これまでに肥大化軟骨におけるCbfa1、Ihh、MMP-13の亢進が示唆されており、今後これらの結果をより詳細に検証することが必要である。以上より頭蓋の形態形成と発育においてFGFR2シグナリングが重要な役割を果たすと考えられる。
|