研究概要 |
口腔白板症は、口腔粘膜上皮細胞の増殖冗進と分化の異常を呈する炎症性角化性病変で、高率に口腔癌に移行する難治性の前癌病変であるが、外科的切除以外に有効な治療薬がなく、より有効で安全な治療法の開発が望まれている。本研究では、口腔白板症に対する新しい治療薬の開発を目的に、合成ビタミンD誘導体である22-oxa-1α,25-dihydroxyvitamin D3(OCT)の口腔粘膜に対する影響を検索した。 まず、口腔白板症患者より採取したケラチノサイトと線維芽細胞におけるビタミンD受容体(VDR)、レチノイン酸受容体のサブタイプであるRXR、transcriptional coactivatorであるTIF2の発現をRT-PCRおよびウェスタンブロット法にて検索した結果、いずれの細胞にもその発現が認められ、口腔白板症がOCTの標的となりうることが示唆された。またケラチノサイトと線維芽細胞の増殖におよぼすOCTの影響をMTT法にて検索した結果、10^<-7>〜10^<-9>MのOCTで濃度依存的にその増殖が抑制され、さらに一部のケラチノサイトでは終末分化マーカー(インボルクリン・サイトケラチン(K1,10))の発現増強がみられ、OCTがケラチノサイトの分化を促進する可能性が示唆された。 一方、口腔白板症の組織切片に対してin situハイブリダイゼーションを行い、本年度購入した顕微鏡用デジタルカメラを用いて病理組織学的に観察したが、現在までの解析ではVDR、RXRαおよびTIF2mRNAの発現とその組織型に明らかな関連性は認められていない。しかし前述の結果は、OCTが口腔白板症の治療薬になりうる可能性を示唆しており、現在も解析を継続中である。
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