研究概要 |
本研究代表者(櫻井学)は,この数年間メチルキサンチン系薬剤の全身麻酔薬への影響を観察してきた.吸入麻酔では,アミノフィリンがイソフルラン・笑気麻酔からの回復を促進することを報告した(Sakurai S, Fukunaga AF, Kaneko Y, Ichinohe T, Kobayashi Y : Anesthesiology 89 1998).また,昨年度までの研究で,アミノフィリンは,プロポフォール8mg/kg/時間,フェンタニール3μg/kg/時間で維持された全身麻酔からの回復を促進させ,またフェンタニール投与に伴う呼吸抑制も拮抗させたことから,アミノフィリンにフェンタニールの作用を拮抗する効果があることが示された. 今回,プロポフオール8mg/kg/時間,亜酸化窒素67%(酸素33%)で維持された全身麻酔からの回復に対するアミノフィリン(5mg/kg)投与の効果を,アミノフィリン非投与のときと比較,検討した.その結果アミノフィリン投与は非投与に比較し,開眼時間,指示行動に従うまでの時間,見当識の回復時間を有意に短縮し(6.3±1.9分vs10.7±4.2分,8.0±1.3分vs14.0±4.3分,10.2±1.8分vs16.6±3.3分),認識力,精神運動機能の回復も有意に促進した.また,アミノフィリン投与により,呼吸抑制の回復促進効果も認められた.アミノフィリン投与に伴う副作用は,術後の疼痛増強も含め認められなかった.これらの結果からプロポフォール・亜酸化窒素麻酔に対し,アミノフィリンの投与は,安全に回復を促進することが示され,これまで報告されているロポフォール・亜酸化窒素麻酔後の覚醒遅延の治療にも有効であると考えられた.
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