研究概要 |
近年、顎関節内視鏡やMRI技術の進歩により、顎関節疾内障患部の状態を把握することが可能となった。また、滑液解析から疾患部で上昇している因子も報告されているが、顎関節部の細胞分子生物学的レベルでの研究は進んでいない。一方、ゲノム科学の進歩に伴い、GeneChipやDNA microarrayが開発され、一度に多数の遺伝子発現を検索することが可能となった。本研究では、顎関節内障患者滑液中で上昇しているIL-1βにてヒト顎関節滑膜細胞(滑膜細胞)を刺激した時の遺伝子発現変動をGeneChipにて検索した。5名の顎関節内障患者の手術時に採取した滑膜よりout growth法にて滑膜細胞を得た。IL-1βを4時間作用させた後total RNAを抽出、cRNAを作成した。cRNAをGeneChip Human Genome Focus Arrayにhybridization後、8,500の遺伝子の発現量を検索した。IL-1β刺激および無刺激の滑膜細胞5例の遺伝子発現解析はGeneSpringにて行った。Anova解析でIL-1βにより発現量に有意差があった遺伝子は170遺伝子、up-regulateは139遺伝子、down-regulateは31遺伝子であった。最も上昇率の高い遺伝子はchemokineであるCCL20で、170遺伝子中chemokineは9遺伝子存在していた。このchemokineの遺伝子発現をreal-time PCRにて確かめたところ、IL-1βによる上昇率はGeneChipの結果と類似していた。さらに、この170遺伝子についてIngenuity Pathway解析を行ったところ、6つのNetworkが作成され、NFkBの活性化により種々の遺伝子発現が上昇していることが示された。以上の結果から、IL-1βは顎関節部の炎症亢進に関与していることが示唆された。
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