口腔粘膜癌の周辺上皮には様々な組織学的異常がみられることが知られているが、その生物学的性状や意義については不明な点が多い。今回、口腔扁平上皮癌症例を対象とし以下の検索を行なった。 (1)臨床的検索 一般的臨床事項について検索した。すなわち、年齢、性別、原発部位、癌の臨床進展度などで、さらに周辺粘膜の肉眼所見、癌と周辺上皮の位置的関係など検討した、その結果、口腔粘膜癌全体と比較して、性、年齢構成に有意差は認められなかった。部位では舌、下顎歯肉の順に多く、臨床進展度ではT2までの小さい症例が多かった。周辺上皮の肉眼所見では白斑が約最も多く、位置関係では異常上皮内に癌が認められたもの(I型)、両者が互いに接するもの(II型)、非連続した部位に認められるもの(III型)、II+IIIに分類された (2)組織学的検索 生検材料にH-E染色を行い顕鏡した。その結果、癌の分化異型度は高分化が多く、周辺上皮の組織所見では異形成を欠くもの、また軽度から高度まで、様々な程度が認められた。 (3)p53蛋白の免疫組織化学的検索 (a)p53蛋白標本の作成 生検材料を対象とし免疫組織化学的染色を行なった。 (b)発現率の評価 癌では陽性が多く、周辺上皮では陰性例が多かったが、一部に陽性例が見られた。周辺上皮では異形成の見られるものに陽性例が多かった。 (4)ki-67蛋白の免疫組織化学的検索 (a)ki-67蛋白標本の作成 生検材料を対象とし免疫組織化学的染色を行なった。 (b)発現率の評価 癌では全例陽性を示した。周辺上皮では陰性例が多かったが、一部に陽性が見られた。周辺上皮では異形成の見られるものに陽性例が多かった。 (5)検索結果の検討 p53蛋白、ki-67蛋白発現は周辺上皮の悪性潜在能を検討する上で指標となる可能性が考えられる。
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