研究概要 |
通常、体細胞はtelomerase活性を持たないためtelomereは細胞分裂の度に短くなり、限界まで短縮すると分裂停止信号がでて細胞は増殖できなくなる。一方、癌細胞には細胞分裂の過程でtelomereの短縮を防ぐ役割を担うtelomeraseが再活性化し、ある程度短くなったtelomereがtelomeraseによって細胞分裂の度に修復される。本年度研究は、重要な癌抑制遺伝子の一つであるp53遺伝子がtelomeraseの再活性化を制御する可能性を検討するために行われた.すなわちpoint mutation (Exon 6,codon 196 CGA (Arg)to TGA (Stop),codon 199 GGA (Gly) to GTA (Val))を認めた口腔扁平上皮癌樹立培養細胞にwild-type p53遺伝子を導入し、p53遺伝子が癌細胞の不死化の重要な因子として考えられているテロメラーゼ活性の発現に対する影響を検討した。 [方法]p53-ptet07-CMV-Lのベクターを作製し、lipofection法にて口腔扁平上皮癌(HNSCC2)へ遺伝子導入した。今回、テトラサイクリン刺激によって導入されたp53遺伝子の発現を誘導し、その時のテロメラーゼ活性(TRAP assay)とhTERT mRNA(RT-PCR法)の発現,およびhTERT蛋白の産生ならびにp53遺伝子導入によるhTERT promoter活性の変化について観察した。 [結果と考察]wild type p53遺伝子の発現誘導によりテロメラーゼ活性のみならずhTERT mRNAの発現の低下が確認された。また,hTERT蛋白の産生ならびにhTERT promoter活性の低下も観察された.これらの結果はwild type p53遺伝子がテロメラーゼ活性とhTERT mRNA発現の制御に関与していることを示唆している。
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