研究概要 |
種々の言語障害および幼児の発声の発達を研究する際の基礎データとすることを目的として、健常児および口蓋形成術後の唇顎口蓋裂児を対象として、開鼻声ならびに閉鼻声を指標とした鼻腔共鳴度と声質を、Nasometer^<【○!R】>およびSona-Speech^<【○!R】>を連動させたシステムを用いて計測し、両群間で比較検討を行った。 被験者は健常児ついてはこれまでに音声データを収集した健常幼児260名で、術後唇顎口蓋裂児は新潟大学医歯学総合病院歯科言語治療室を通院中の幼児85名とした。 検査方法は以下のように行った。 1.独自に開発した音節・文章復唱検査をサンプルとしたNasometer^<【○!R】>による鼻腔共鳴度nasalance評価。 2.上記1の音節および母音/i/と/e/の持続発声について、Sona-Speech^<【○!R】>により母音のフォルマント(F1,F2)周波数を測定し、嗄声を示すものではその音響特性の抽出を試みた。 結果 1.Nasometer^<【○!R】>による鼻腔共鳴度評価では、健常幼児は閉鼻声例(10名)を除いた文章検査の平均nasalanceは22.5%であったのに対して、唇顎口蓋裂児では明らかな開鼻声が認められた22名を除いた平均nasalanceは38.5%と有意な差が認められた。聴覚的に明らかな開鼻声と判定されなくても唇顎口蓋裂児ではnasalanceが高いものが多いと考えられた。また、健常幼児でもnasalanceが高値な一群がいて、地域的な特徴であると考えられた。 2.母音/i/と/e/の周波数測定では、/i/のF2が低く、/e/のF2が高い周波数を示すものがおり、1.でnasalanceが高値を示すもので多かった。これは新潟方言の特徴を示すものであると考えられた。 3.嗄声の音響特性は、幼児では被験者による違いが大きく、一般的な特徴を抽出しにくく、さらに方法を検討することにした。
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