昨年度施行した、白板症のDNA Array検索に続き、本年度は初期(StageI〜II)の口腔扁平上皮癌5例(舌3例、頬粘膜1例、歯肉1例)について、mRNAの発現をDNA Arrayを用いて検討した。本研究では1185種の遺伝子を検索できるDNA Arrayを用い、発現量が2倍以上でバックグランド値(4)以上の差異がある場合に有意差があるとした。5例全例で発現量が増加していた遺伝子は16種、減少していたのは8種であった。本研究において変異した遺伝子は12p12-13、Xp22-28に多く認められ、過去に報告された口腔や咽頭の癌で高度に変異を受けやすいとされる染色体の部位に含まれる領域であった。癌関連遺伝子においては、エンドセリン2が増加している一方で、tumor suppressor QM遺伝子産物が減少し、エンドヌクレアーゼIIIの同族体の減少とともに、癌の進展に関与すると考えられた。コラーゲンIV、デスモコリン、ビグリガン、α2マクログロブリンおよび各種免疫グロブリンの構成分子の増加が認められ、周囲健常組織の防御反応と考えられた。正常な口腔粘膜上皮に多く発現するケラチン2pや4が顕著に減少していたが、これと同様の変化が白板症においても確認されており、癌化というよりも異角化に伴う反応と考えられた。これらの結果を6th Asian Congress on Oral and Maxillofacial Surgery、第49回日本口腔外科学会総会において報告した。
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