研究概要 |
顎関節円板切除術は顎関節症の進行例に対して有効な治療法であるが、術後に退行性変化や線維性癒着を生じたりすることがある。このような有害な術後変化を防止するため関節内板の代わりとなる中間挿入物が臨床の場で求められている。しかしながら、現段階において理想的な中間挿入物があるとは言えない。そこで腱を中間挿入物として選択し,関節円板切除術のみを行った顎関節と,グルタールアルデヒドまたはエポキシで処理された腱を移植した顎関節とを比較し、同種腱の中間挿入物としての効果を検討した。 実験動物のウサギを全身麻酔下におき顎関節部に局所麻酔をした後、関節円板切除を行った。対照群では関節円板を切除した後に創を各層毎に縫合し閉創した。グルタールアルデヒド処理腱移植群またはエポキシ処理腱移植群では関節円板を切除した後、グルタールアルデヒドまたはエポキシで処理を行った同種腱を中間挿入物として右側顎関節に移植した。グルタールアルデヒド処理は室温でウサギの腱を0.625%グルタールアルデヒド溶液にリン酸緩衝液を加え浸漬し、エポキシ処理は4%エポキシ溶液に炭酸緩衝液を加え浸漬した。処理を加えた腱は24時間以上流水中で洗浄し移植材料に供した。 顎関節円板切除単独群を対照として、グルタールアルデヒド処理腱移植群とエポキシ処理腱移植群の術後3か月時点での顎関節の病理組織学的な比較検討を行ったところ、関節円板切除による退行性変化を軽減するため同種保存腱の移植が有利に働くと考えられた。グルタールアルデヒド処理腱移植群およびエポキシ処理腱移植群の両群ともに腱の多くが消失していた。しかし,腱が3か月の間に消失してもある程度の関節滑走面の保護効果がある可能性が示唆された。
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