研究概要 |
顎関節症の治療体系の中で,理学療法の内,開口訓練を主体とするリハビリテーションについては四肢や体幹の関節症の治療体系と比較して整っておらず,市販され,普及している開口訓練器具は,木製のバネ式開口訓練器具(医歯大式)や送気式ゴム製開口訓練器具であり,いずれも急速な一期的他動訓練器具で開口訓練が行われているのが現状であった.わずかに大月らが試作した大型ロボットによる連続型他動訓練装置があるものの,大型であり,すべての患者個人に対応させるにはほど遠く,試作段階に留まっている.リハビリテーションの原則は,いっていのプログラムで個々の患者の病状にあった器具で,連日簡便にどの時間帯でも施行可能なことである.本研究ではパスカルの原理に着目し,水圧のジャッキを応用し,手の把持力を開口訓練器具に伝達させる簡便な器具を開発することを計画した. 本開口訓練器具(フォーメディクス試作1型)は,ポリエチレン製水圧ジャッキ部,ステンレス製開口訓練部,ステンレス製把柄部,ポリエチレン製加圧部,ポリエチレン製連結チューブからなっている.健常成人女子の握力値から推定し,5〜10kg加圧時にステンレス製把柄部に内蔵したポリエチレン製加圧部,ポリエチレン製連結チューブを介して,ポリエチレン製水圧ジャッキ部に水圧が伝達され,25〜50kgの応力でステンレス製開口訓練部を開閉させることが判明した.2例の鏡視下手術患者に従来の送気式ゴム製開口訓練と使用感を比較すると,良好であった.
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