研究概要 |
口腔癌におけるTERT mRNAの発現とデロメラーゼ活性の制御機構について 1)テロメラーゼ活性:正常歯肉粘膜2例にはテロメラーゼ活性を認めず(0%),白板症は4例中3例(75%)に,扁平上皮癌は16例中11例(68.8%)にテロメラーゼ活性を認めた。 2)hTR,hTEP1,hTERT mRNAの発現:口腔組織検体ではhTR,hTEP1 mRNAは正常歯肉粘膜を含む口腔組織検体全22例の全例(100%)に発現を認めた。hTERT mRNAの発現は正常歯肉粘膜には認めず(0%),白板症,扁平上皮癌の20例中12例(60%)に発現を認めた。白板症において4例中3例(75%)に,扁平上皮癌では16例中9例(56.3%)にhTERT mRNAの発現を認めた。 3)テロメラーゼ活性とhTERT mRNA発現との相関:正常歯肉粘膜を除く口腔組織検体全20例中,テロメラーゼ活性とhTERT mRNAの共に発現を認めたのは12例(60%)で、共に発現も認めなかったのは7例(35%)であった.テロメラーゼ活性を認めた口腔組織検体の14例中2例(14.3%)にはhTERT mRNAの発現を認めなかった。全20例のテロメラーゼ活性とhTERT mRNA発現の関係は危険率0.1%で相関係数0.74の高い相関を認めた。 【考察】 正常歯肉組織,前癌病変(白板症)を含む全例でhTR,hTEP1 mRNAの発現が認められ,その発現の程度に差は認められなかったことから、テロメラーゼ構成タンパクはテロメラーゼ活性の発現に必要ではあるが制御とは直接的に関与しないと考えられた。また、hTERT mRNAの発現とテロメラーゼ活性との間には強い相関関係が認められたことから、hTERT mRNAの転写が口腔悪性病変におけるテロメラーゼ活性の発現の律速因子となっており、発癌のプロセスに重要な条件であると考えられた.
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