研究概要 |
平成14年度までの研究ではヒトの口腔癌、及び前癌病変を用いてテロメラーゼ活性の発現とhTERT mRNA発現の検討を行い、両者の発現が密接に関連していることを示した。 平成15年度では、さらに発癌過程におけるテロメラーゼ活性の発現時期、及びテロメラーゼ活性とTERT mRNAの関係を知る目的でhamster舌に化学発癌剤を用いたin vivo発癌実験を行った。 方法)化学発癌剤9.10.ジメチル1.2.ベンツアントラセン(DMBA)を5%アセトン溶液として、4週齢のゴールデンハムスターの左側舌縁を歯科用クレンザーで数回擦過後、DMBAを塗布し、舌癌を発生させた。肉眼的変化を認めた段階で屠殺し、舌の病理学的変化の観察とテロメラーゼ活性の測定、及びGene Bankで得られたDNA配列を元にprimerを設計、RT-PCRにてTERT mRNA発現の検出を行った。 結果)DMBA塗布開始2ヶ月で舌に過形成を認めた。さらに4ヶ月目には白板症、5ヶ月目に腫瘍の形成を認め病理組織学的にも扁平上皮癌を認めた。 ・テロメラーゼ活性は正常舌でも弱いながら検出され、過形成、白板症、扁平上皮癌の順で強い活性が検出された。 ・TERT mRNAは正常舌、過形成、白板症、扁平上皮癌のすべてにおいて発現を認めた。また、その強弱はテロメラーゼ活性とほぼ相関していた。 結論)Hamsterの舌発癌過程においてテロメラーゼ活性は癌化に伴い強い活性を示した。また、,TERT mRNAはテロメラーゼ活性とほぼ相関して発現が認められることからテロメラーゼ活性はTERT mRNAの転写により制御されているものと考えられた。 今後の課題として、これらの知見を元に、さらにTERTの転写前の上流域、例えばTERTのプロモーター領域には多数のc-myc結合部位が存在することからTERTとc-mycの関係等、癌原遺伝子との関連性を検索する予定である。
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