研究課題
口臭の器機測定法としては、揮発性硫黄化合物(VSC)を指標にガスクロマトグラフィやセンサ型口臭測定器を用いる方法が、我々のみならず世界的なスタンダードとされてきた。しかし官能試験では明らかな糞臭、アミン臭、チーズ臭等の悪臭を認める症例があるにもかかわらず、上記の機器分析では検出されない例が知られており、これが口臭臨床の科学的発展を阻んできた。そこで、VSC以外で、しかも官能検査で感知可能な悪臭成分について、FTDなど幾つかの検出器を用いてガスクロマトグラフィで分析を試みたが、いずれも検出限界以下で臨床検査の俎上に載せることができなかった。ところで、これら糞臭などの発生源は、その一部が口腔にあるものの、多くが腸内容物の腸管内嫌気分解で発生したガスが血流中に溶出し、肺を経で呼気中に排出されると考えられている。こうした嫌気性分解過程は還元性の雰囲気であるため、その生成物には水素ガスが含まれるであろうことは想像にかたくない。これを呼気中から検出することにより、腸管由来の悪臭の量を代表できる可能性を検討した。我々は水素に対する特異性の高い半導体センサを完成させており、これを用いて口内気体水素検出器の開発に着手した。しかし口内気体中には100種類を超す水素化合物があり、この中から水素のみを選択的に測定する方法は困難であったことから、特殊な充填材で満たしたカラムを用いて水素を単離する手法を編み出し、キャリアガスとして純粋空気を採用し、コンピュータ制御で操作する口内気体中水素検出器を開発した。予備的な人口内気体測定では水素濃度で10〜200ppm程度の検出レンジであり、検出感度、検出幅共に実用に耐えるものであった。これで平成14年度研究目標であった口内気体、呼気の水素濃度を定量する課題は達成され、今後改良を重ねて実際の口腔気体測定に移行するべく努力している。
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