研究課題/領域番号 |
14571940
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
大坪 邦彦 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 講師 (20272601)
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研究分担者 |
松本 芳郎 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (20292980)
浅井 真人 古川テクノマテリアル(株), 横浜研究所基盤技術センター, 主査
米山 隆之 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教授 (00220773)
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キーワード | 矯正用超弾性型Ti-Ni合金ワイヤー / 振動減衰能 / 衝撃吸収性 / 歯周組織 / 骨代謝活性 / 中空型ワイヤー |
研究概要 |
【目的】矯正治療中において、反対咬合の被蓋改善時などの不安定な咬合状態では、一時的に特定の歯に過大な咬合力がかかることがある。本研究は、これらの歯に対する振動刺激が矯正用アーチワイヤーを介して他歯や歯周組織に、及ぼす影響を明らかにすることを目的として行った。 【材料・方法】ラット下顎切歯から右側第一、第一、第三臼歯に超弾性型Ti-Ni合金ワイヤー、もしくはステンレス鋼ワイヤーを光重合型レジンにて装着し、超音波スケーラーによる3種類の強さの振動刺激を下顎切歯に与え、この刺激がワイヤーを介してラット臼歯歯周組織に与える影響を光顕的に観察した。 【結果】ワイヤーを装着せずに直接臼歯に刺激を与えたものでは高度の歯根膜の変性や炎症性反応、歯髄の充血などが認められた。それと比較して、ワイヤーを装着して切歯に刺激を与えたものでは、ステンレス鋼ワイヤーを装着したものにおいては軽減されてはいるものの、同様の所見が認められた。一方、超弾性型Ti-Ni合金ワイヤーを装着したものでは歯根膜の変性や炎症性反応、歯髄の充血はほとんど認められなかった。 【考察】本実験においてISW(Improved Super-Elastic Ti-Ni Alloy Wire)を介して振動を伝播させたものでは、歯周組織の変化はほとんど認められなかった。これは、単一の母相からなるステンレス鋼ワィヤーと異なり、Ti-Ni合金は双晶型合金であり、熱弾性型マルテンサイトにおける変態双晶境界、または母相とマルテンサイト相との相界面の移動に関連して内部摩擦が増大して高い振動減衰能が出現するため、ラット口腔内においてもISWの振動減衰能が発現され、振動が緩衝されたものと考えられる。このことから、マルチブラケット法による矯正治療にISWを使用した際に、一部の歯に強い咬合力などが加わった場合、ワイヤーが衝撃を緩衝し、歯周組織を刺激から保護するとともに、他歯への振動の伝播を防いでいることが示唆された。
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