研究概要 |
本年度は前年度に引き続き,年齢の影響による細菌叢の変化(シフト)を解析するために,分子生物学手法を駆使し,口腔細菌叢の解析を行った。20歳以下の各年齢層の健全な歯面から滅菌探針にて採取した歯垢を試料とし,PCR法による細菌種の同定を試みた。齲蝕との関わりが深いとされるmutans streptococci,特にS.mutans,S.sobrinusについて検索を行った。primersとして,16S ribosomal RNA,glucosyltransferase及びdextranaseの異なる3種類の遺伝子を標的遺伝子としたものを用い,検出頻度を比較した。その結果,S.mutans,S.sobrinusとも,16S rRNAを標的遺伝子とした場合,最も検出頻度が高かった。16S rRNAを標的遺伝子とした場合で,検出率を年齢層別に見ると,S.mutansは全ての年齢に検出されたが,S.sobrinusは,2歳(40%),5歳(12%),7〜14歳(7〜50%)で検出されたが、全年齢層を通して検出率は低く,歯列完成期および混合歯列期に検出されるという前年度までの結果(傾向)が確かめられた。さらに,16S rRNA遺伝子PCR産物の塩基配列をシークエンス法で求め,Type strainとほぼ一致することを確認し,16S rRNA遺伝子に基づく方法の確からしさ・有用性が確認できた。16S rRNA遺伝子に基づいたPCR法は,species-specific primersを適切に選択することによって,mutans streptococci以外の歯垢細菌の迅速・的確な検出に適用可能なことから,加齢に伴う口腔細菌叢の変化をモニターする際にも有用であると考えられた。
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