研究概要 |
歯の移動において、歯根膜は力学的刺激を細胞学的シグナルに変換する重要な細胞組織と考えられているが、細胞内での遺伝子制御については不明な点が多い。本研究では、歯根膜由来の力学的刺激特異的な遺伝子発現様相の解析と歯根膜由来の新規遺伝子を検索することを目的とした。 1.歯根膜細胞への圧縮力(メカニカルストレス)負荷実験系の確立 コラーゲンゲルを用いて3次元培養した歯根膜細胞に負荷をかける実験系を確立した。 2.圧縮力に応答した遺伝子の発現解析 予備実験において本実験系における歯根膜細胞が圧縮力に応答することを確認し、次に、圧縮力(メカニカルストレス)を負荷した場合と負荷しない場合における歯根膜細胞内の遺伝子発現の違いについてマイクロアレイを用いて検討した。 3.遺伝子検索および研究対象の遺伝子特定と決定 30,000遺伝子を対象に発現を検討したところ、17,607遺伝子が検出可能であった。メカニカルストレスに反応して特異的に発現する遺伝子に関して、NCBI Databaseを利用して遺伝子検索を行った結果、メカニカルストレスを負荷した場合85個の遺伝子の発現上昇と、23個の遺伝子の発現減少が確認された。そのうち既知遺伝子では、サイトカイン、ストレス関連因子、Gタンパク関連因子などの遺伝子がメカニカルストレスに反応してその発現を増加させた。一方で、機能未知なものとして53個の遺伝子が、メカニカルストレスに反応して発現を増加することも確認された。 本研究より、コラーゲンゲルを用いた歯根膜細胞の三次元培養法は、メカニカルストレス負荷に応答した細胞機能や遺伝子発現の様相をin vitroで解析するのに有用な方法であると言える。今後は、既知遺伝子の歯根膜細胞における機能解析を進めるとともに、機能未知遺伝子の絞り込みを行いその機能や局在を明らかにし、歯根膜細胞に特異的な新規遺伝子の解明を行う必要がある。
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