研究概要 |
<研究の目的>:乳歯象牙質の微小硬度と弾性率がレジンの接着性に及ぼす影響を齲蝕下乳歯象牙質と健全乳歯象牙質間で比較する。 <研究結果>1.自家考案の引張り試験用Jigシステムの開発:乳歯用にTDC Jigシステムを開発した。 2.齲蝕下乳歯象牙質及び健全乳歯象牙質の硬さ、弾性率と微小引張強さの測定:抜去乳歯の物性を測定した結果、永久歯と比較し、いずれの項目についても乳歯は劣っており、特に齲蝕周囲と歯髄に近い部分の象牙質の測定値が有意に低かった。 3.齲蝕下乳歯象牙質接着面に対する微小硬度と弾性率の測定と健全歯群との比較:抜去乳歯にClearfil MegaBond(MB群,クラレ社)とSingle Bond(SB群,3M社)を応用し,接着界面に対する硬さとヤング率を測定した。接着界面より下方の象牙質と比較し,接着界面の象牙質は硬く,永久歯とは逆の結果を示した。一方,ヤング率は,永久歯同様に低い値を示した。齲蝕群と健全群間に有意差はみられなかった。 4.健全並びに齲蝕下象牙質に対する微小引張り接着強さ(MTBS):抜去乳歯を用い、MB群とSB群に対するMTBSをダンベル型試料とスティック型試料を作成して測定した。ダンベル型もスティック型もMTBSの平均値は低く、10MPa以下であった。MB群とSB群間並びに健全群と齲蝕群亜諫のMTBSに有意差はみられなかった。 5.まとめ:健全乳歯群と比較し齲蝕乳歯群の接着界面の形態は複雑でHybrid層も厚かったが,両群ともに接着強さは低く,etchingもしくはpriming後の象牙質の弾牲率は,接着性レジン塗布により回復されていない場合があった。乳歯象牙質接着界面の物性は,永久歯とは異なっており,永久歯用に設定されている接着性レジンシステムの使用法は,乳歯に対して最適ではなく、乳歯の物性を考慮した接着性レジンシステムの開発が必要である。
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