研究概要 |
我が国はCa摂取不足状態にあるが、骨塩量がピークを迎える18〜20歳までに十分量のCaを骨に貯える必要がある。近年、大豆から抽出されたイソフラボン誘導体であるイプリフラボン(IF)は、骨量減少治療薬として承認され、破骨細胞吸収抑制作用、骨量増加作用があると報告されている。本研究では、このIFが、成長発育期の骨基質形成にどのように作用するのか、さらにCaの作用とあわせ、電子顕微鏡学的検索を行った。 生後5週齢のWistar系雄ラットを対照群、Ca欠乏食群、Ca欠乏食+標準食群、Ca欠乏食+高Ca食群、Ca欠乏食+高Ca食・IF添加標準食群の5群に分けて飼育した。4週間飼育完了後、下顎頭を摘出し、走査型電顕試料と透過型電顕試料をそれぞれ通法に従い作製し、観察を行った。 走査型電顕所見では、Ca欠乏により、軟骨小腔の区画の不明瞭化、小腔壁の縦走基質の断裂部、コラーゲン原線維の未石灰化部の増加がみられ、軟骨下骨形成帯では広範囲に骨吸収面がみられた。その後のCa摂取だけでは、充分な回復所見はみられなかったが、さらに、IFを摂取することにより、軟骨小腔は明瞭となり、石灰化小球は密に癒合していた。軟骨下骨形成帯では、骨小腔が多数みられ、一定に走行するコラーゲン原線維によって平滑面を呈していた。 透過型電顕所見では、Ca欠乏により、骨芽細胞の減少、特に破骨細胞の増加、活性化が顕著であった。その後のCa摂取により前骨芽細胞様細胞、骨芽細胞および幼若骨細胞の増加がみられ、さらに、IFの投与により骨芽細胞の活性化、破骨細胞の活性抑制が認められ、核・細胞質比率が大きい骨細胞が認められた。 Ca摂取不足により成長発育期に骨虚弱状態に陥っても,その後のCa摂取とIF摂取により破骨細胞による骨吸収抑制作用,骨芽細胞への骨量増加作用を誘発し,軟骨内骨化における骨形成促進が微細構造学的観察によって示唆された.
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