研究概要 |
顎顔面および歯列咬合形態の異常が咀嚼運動に及ぼす影響と、口腔周囲軟組織の機能異常が咀嚼運動に与える影響を検討した.平成15年度では(1)口唇の離開と咀嚼運動(2)口唇の閉鎖機能と咀嚼運動の関係を検討した.以下に結果と今後の展望を記す. (1)37名の被験者について,ホルター型筋電計を用いシールドルーム内にて安静時と睡眠時,およびガム咀嚼時の左右咬筋と下口唇の筋活動を計測した.その結果、無力性口唇を有する被験者では咀嚼時の下口唇の筋活動が増加し,下唇の緊張を伴う口唇閉鎖により咬筋の筋活動のリズムに影響を及ぼしていることが示唆された. (2)上顎切歯唇面にdummy置いてoverjetを増加し閉鎖機能を検討した.その結果、下唇が口唇閉鎖に重要な役割を果たし、無力性口唇を有さない被験者においてもoverjetの増加と下唇の口唇閉鎖時の筋活動との間に有意な正の相関関係が認められた. 口唇の閉鎖機能を障害する形態的要因に負のoverbite,過大な顔面高,下顎骨の時計回転など垂直的な不調和などが考えられているが、様々な要因で口唇の閉鎖が困難であり、口唇を離開して咀嚼すると咀嚼運動に乱れが生じることが分かった.口唇の閉鎖機能を回復することの意義を示すものであり、今度、さらに歯列咬合の垂直的変化と口唇閉鎖に与える影響を下顎骨の時計回転による咬合高径の増加などの垂直的変化と口唇の閉鎖機能を検討する方法論を確立した.
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