幼若永久歯の歯内療法や再植療法において予知性の高い予後を得るためには局所的な環境における細胞の反応性を理解することが重要である。この研究はin vitroやin vivoにおいてみられるエナメルマトリックスプロテイン(EMP)のセメント芽細胞に対する効果を検討する目的で行った。方法:オステオカルシンプロモーター領域にSV-40を導入したトランスジェニックマウスより樹立したセメント芽細胞を使用した。エナメルマトリックスプロテインを作用させた後の以下の変化から評価を行った。1)6日間の培養期間中における細胞数からみた増殖性;2)ノーザンブロット解析による遺伝子発現;そして3)石灰化はin vitroにおけるフォン・コッサ染色や移植前にEMD処理を施したセメント芽細胞をSCIDマウスに移植後、回収した移植片から作製した組織学的標本から評価である。結果;EMPはセメント芽細胞が細胞の増殖を促進していた。EMPはセメント芽細胞においてオステオカルシンの転写をdown-regulateし、オステオポンチンの遺伝子発現をup-regulateしていた。In vitroにおいてEMPは石灰化を抑制する傾向を示したが、EMP処理を施したセメント芽細胞をSCIDマウスに移植後、回収した移植片において対照的な石灰化がみられたことが注目された。結論;これらの結果はEMPがセメント芽細胞の活性に影響を与える可能性を示している。
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