研究概要 |
矯正学的歯の移動に伴う骨代謝にプロスタグランディン(PG)や各種サイトカインが深く関与していることが明らかにされている。近年、骨代謝におけるlysosomal cystein protcaseの関与が重要視され、骨コラーゲン分解に深く関与していると考えられている。矯正学的歯の移動時には歯周組織の細胞活性に変化が生じ、その変化は歯肉溝滲出液GCF(gingival crevicular fluid)に反映され、PGE、インターロイキン-1、6等が増加することが明らかになっている。しかしながら、矯正学的歯の移動時のGCF中のカテプシンに関しては十分に解明されていない。そこで、矯正学的歯の移動時の歯肉溝溶出液中のカテプシンB(CAB)、L(CAL)の活性について検討した。上下顎左右第一小臼歯抜歯症例10名を対象とし、遠心移動を行う犬歯を実験歯、反対側の犬歯ならびに実験歯と同側の反対顎の犬歯を対照歯とした。レベリング後、ステンレスワイヤーを装着し、エラスティックチェーンを用いて実験歯の遠心移動を行った。移動開始後、継時的(0,1hr、24hr、168hr)にGCFを採取した。タンパク抽出後、CAB、CALの測定は、ELISA kitにて行った。矯正学的歯の移動に伴い実験歯GCF中のCAB、CALの産生量は24hrで対照歯よりそれぞれ約2倍高い値を示した。さらに、Western-blot分析によりCABのタンパクを確認した。また、矯正治療のため抜去した歯から採取した歯根膜を継代培養して得た歯根膜細胞に周期的伸展力を9〜18%で5日間作用させた結果、CALの活性は周期的伸展力により経時的および伸展力依存的に増加した。以上の結果より、矯正学的歯の移動時の骨コラーゲン分解にCAB、CALが深く関与していることが示唆された。
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