矯正学的歯の移動に伴う骨代謝におけるlysosomal cystein proteaseの菊について検討するために、矯正学的歯の移動時の歯肉溝滲出液中のカテプシンB(CAB)、L(CAL)の活性について測定した。上下顎左右第一小臼歯抜歯症例10名を対象とし、遠心移動を行う犬歯を実験歯、反対側の犬歯ならびに実験歯と同側の反対顎の犬歯を対照歯とし、ステンレスワイヤーを装着後、エラスティックチェーンを用いて実験歯の遠心移動を行った。移動開始後、継時的(0、1hr、24hr、168hr)にGCFを採取した。タンパク抽出後、CAB、CALの測定は、ELISA kitにて行った。矯正学的歯の移動に伴い実験歯GCF中のCAB、CALの産生量は24hrで対照歯よりそれぞれ約2倍高い値を示した。さらに、Western-blot分析によりCABのタンパクを確認した。また、矯正治療のため抜去した歯から採取した歯根膜を継代培養して得た歯根膜細胞に周期的伸展力を9〜18%で5日間作用させた結果、CALの活性は周期的伸展力により経時的および伸展力依存的に増加した。さらに、in vivoの実験系において、Waldoの方法に基づき13週齢のWister系雄性ラットに実験的矯正力を加えて、7日までのCABおよびCALの局在を免疫組織学的に検討した。その結果、歯の移動開始後3日目に圧迫側および牽引側の両側において破骨細胞の出現を認め、その細胞はCABおよびCALの強度陽性を示していた。また、歯根膜線維芽細胞におけるCABおよびCALの染色態度の対照群に比較して陽性度が高かった。7日目も引き続き同様の所見が得られたが3日目に比較して、破骨細胞、歯根膜線維芽細胞における染色態度は若干減少していた。以上の結果より、矯正学的歯の移動時の骨コラーゲン分解にCAB、CALが深く関与していることが示唆された。
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