研究概要 |
平成14・15年度までに矯正学的歯の移動時の歯肉溝滲出液中のカテプシンB(CAB)、L(CAL)の活性が実験歯において24hrで対照歯よりそれぞれ約2倍高い値を示したこと、また、培養歯根膜線維芽細胞に周期的伸展力を9〜18%で5日間作用させた結果、CALの活性は周期的伸展力により経時的および伸展力依存的に増加しこと、また、in vivoの実験系において13週齢のWister系雄性ラットに実験的矯正力を加えて、7日までのCABおよびCALの局在を免疫組織学的に検討した結果、歯の移動開始後3日目に圧迫側および牽引側の両側において破骨細胞の出現を認め、その細胞はCABおよびCALの強度陽性を示したことを報告した。 最終年度の平成16年度では培養歯根膜線維芽細胞に持続的圧縮力を0〜3g/cm^2,持続的伸展力を0〜2.5% increase in surface areaの加重でそれぞれ24時間作用させ、CAB、CALの活性を測定した。さらに、細胞に2g/cm^2のCompression Force、および2.5% elongationで12時間作用させ、RT-PCRにて遺伝子発現を検討したところ、持続的圧縮力,持続的伸展力によりCAB、CALの遺伝子発現が増強されたことが確認された。さらに、培養歯根膜線維芽細胞にinterleukin-6(IL-6)とp44/42MAPKの特異的阻害剤であるPD98059を添加し、IL-6によるCAB, CALの活性の上昇にMAPKが関与しているかを検討したところ、PD98059の添加によりCAB, CAL活性は有意に抑制された。以上の結果から、歯根膜線維芽細胞は機械的外力およびIL-6に対してCAB, CALの活性を上昇させることにより、矯正学的歯の移動時の骨コラーゲン分解に深く関与していることが示唆された。
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