研究概要 |
歯根吸収については坂本の分類(日本矯正歯誌;1958)に基づき4度以上の患者を重度歯根吸収とし、.後に矯正治療により歯根吸収が発生した患者3名の保存歯髄細胞を実験に供した。細胞にneuropeptide (Substance P; SP, Calcitonin Gene-related Peptide; CGRP)を10^<-4>〜10^<-12>mol/Lの濃度で24時間作用させ、prostaglandin (PG)E_2, interleukin(IL)-1β,6の産生量を測定した。SPおよびCGRP刺激により対照群に比べて歯根吸収群のPGE_2, IL-1β,6の産生量は五れぞれ経時的および濃度依存的に増加した。以上の結果より、歯根吸収群におけるneuropeptide刺激による多量のPGE_2,IL-1β,6の産生が歯髄組織の炎症の進行および歯根吸収の発生に深く関与していることが示唆された。 一方、下顎前歯部における矯正治療前後のopen gingival embrasure space(OGES)の発生について検討を行った結果、OGESの発生はすべての症例に認められ、Black Triangle(BT)43.7%、pinpoint and papilla filling type38.7%であった。年齢についてはBTの発生率は21歳未満で18.1%、21歳以上で66.7%であった。治療前の叢生の状態については、4mm以下で43.8%、4〜8mmで40.0%、8mm以上で50.0%でありた。治療期間では3年未満で42.9%、3年以上で43.8%であった。18歳以上の矯正治療は40%のOGESを誘発し、BTの発生率は年齢が高くなるほど、また治療前の叢生量が多いほど高くなることが示された。
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