研究概要 |
前年度に引き続き、今年度は歯根膜線維芽細胞について検討を行った。歯根吸収については坂本の分類(日本矯正歯誌;1958)に基づき4度以上の患者を重度歯根吸収とし、後に矯正治療により歯根吸収が発生した患者3名の保存歯根膜線維芽細胞を実験に供した。Yamaguchiらの方法に基づき、細胞に持続的圧縮力(Compressive Force)を0〜3g/cm^2の加重で24時間作用させ、prostaglandin (PG) E_2,interleukin(IL)-1β,6,tumor necrosis factor (TNF)-αの産生量を測定した。さらに、細胞に2g/cm^2の加重で12時間作用させ、得られた培養上清をヒト破骨前駆細胞培養系に添加し、カテプシンK、TRAP染色およびpit formation assayにて破骨細胞形成を観察した。その結果、加重刺激により対照群(非吸収群)に比べて歯根吸収群のPGE_2,IL-1β,6,TNF-αの産生量はそれぞれ経時的および加重依存的に増加した。また、加重刺激により対照群に比べて歯根吸収群のカテプシンK、TRAP陽性多核細胞数および吸収窩とも対照群(非吸収群)に比べて有意に増加した。以上のことから、重度歯根吸収由来歯根膜線維芽細胞は加重刺激により多量のPGE_2,IL-1β,6,TNF-αを産生し、さらにそれらに誘導され、強い破骨細胞形成能により歯根膜組織の炎症の進行および歯根吸収の発生に深く関与していることが示唆された。前年度の歯髄細胞の結果と合わせると矯正治療による重度歯根吸収の発生の原因は歯髄細胞と歯根膜線維芽細胞が非吸収群に比べて多量のPGE_2,IL-1β,6,TNF-αを産生し、さらに強い破骨細胞形成支持能によることが示唆された。
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