研究概要 |
ヒト乳歯および永久歯歯根膜組織由来線維芽細胞(それぞれHPLF-D, HPLF-P),ヒト歯槽骨由来骨芽細胞(hOB)はそれぞれ川瀬らの方法,Robeyらの方法に従い,またヒト歯肉由来線維芽細胞(hGF)はdispase II処理後の歯肉組織からのexplant法により培養を行った。培地中に1α,25 dihydroxyvitamin D_3(D_3)あるいはdexamethasone(Dex)を添加し3から11日間培養した後,total RNAを抽出しRT-PCRによりOPGおよびRANKLのmRNA発現について検索した。 Control cultureにおいてはOPG mRNAの発現レベルはHPLF-PではHPLF-Dよりもわずかに高く,hOBおよびhGFとほぼ同程度であり,D_3の添加による著明な変化は認められなかった。一方RANKL mRNAの発現レベルはHPLF-Pに比較してhOBとHPLF-Dで高く,D_3の添加により濃度依存的に上昇したが,hGFにおける発現は認められなかった。一方,Dexの添加群におけるRANKLおよびOPGのmRNA発現には著明な変化は認められなかった。したがって,OPGに対するRANKLの発現量の割合(RANKL/OPG)はHPLF-Pに比較してHPLF-Dで高く,D_3の添加により濃度依存的に上昇した。 以上の結果から,乳歯歯根膜の線維芽細胞は骨芽細胞と同様にRANKLとOPGの発現を介して破骨細胞形成を調節することにより,歯槽骨吸収,歯根吸収の調節において重要な役割を果たし,その作用は活性型vitamin D_3により促進されることが示唆された。
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