歯周組織、とくに歯根膜及び歯槽骨での微小循環には大別して血管系とリンパ管系の2種類が存在する。従来、これを全体像としてとらえ、観察することは非常に困難であった。その理由として、硬組織内あるいは硬組織に隣接しているという位置的に組織学的観察が困難であることがあげられる。また切片標本では二次元的な観察のみ可能であり、立体的・動的な変化を観察し得ないためである。また、血管系・リンパ管系をそれぞれ分離して観察することが困難であったことも、その理由としてあげられる。しかし、近年の免疫組織学的手法(CD34、CD9、D2-40など)により、リンパ管内皮細胞のみあるいは血管内皮細胞のみに特異的に染色する方法が見いだされるようになってきた。今回、イヌ実験的歯周炎において、血管、リンパ管がどのように変化するかについて、明らかにした。その結果、免疫組織化学的に、CD34は血管に特異的に染色され、一方CD9およびD2-40はリンパ管に特異的に染色された。対照群に比して実験群では、血管、リンパ管ともに数の増加がみられた。立体構築学的に、対照群では、血管とリンパ管は規則的なネットワークをなしてパラレルに走行しているのに対し、実験群ではその走行が不規則になり、管腔の大きさに変化がみられた。
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