研究概要 |
前年度までに、多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma;PRP)には1)PDGF,TGF-βが高濃度に濃縮されていること、2)骨芽細胞および歯根膜線維芽細胞に対して増殖を促進し上皮細胞には抑制を示す作用があること、3)歯根膜線維芽細胞においてフィブリン塊の形成を介してコラーゲン産生を促進することを明らかにした。これよりPRPは増殖因子とフィブリンの相乗効果により歯周組織再生を促進する可能性があることが示唆された。さらに、多孔性ハイドロキシアパタイト(HA)を坦体としたPRP+HA混合移植材を歯周骨内欠損に応用し、6か月予後について臨床的に有効であることを報告した。 本年度は、PRPの臨床効果をさらに厳密に評価するために、PRPを含まないHA単独投与群との比較臨床研究を行った。歯周基本治療を完了して同意の得られた70名を被験者とした。6mm以上のポケット(PPD)と6mm以上の付着レベル(CAL)、規格エックス写真より3mm以上の骨内欠損を示す70部位を被験部位として、無作為に35部位づつ2群に分けた。テスト群にはアルギン酸ナトリウムにより活性化させたPRPとHA混合移植材を填入、また対照群にはHA単独を填入してそれぞれ緊密に縫合した。1年目に群間および群内比較を行った。テスト群、対照群ともベースラインと比較してPPD、CALおよび骨欠損深さにおいて改善した。さらにテスト群は、1年目においてPPD、CAL、vertical relative attachment gain(V-rAG)において次に示すように対照群の成績を有意に上回る改善度を示した(PPD:3.03mm vs 4.17mm,CAL:4.97mm vs 6.80mm,V-rAG:70.3%vs 45.5%)。この理由はin vitroの系で明らかにされたPRPの生物学的作用が臨床効果に反映していることが推察される。
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