研究概要 |
多血小板血漿(PRP)は血漿と比較して血小板数で約2.8倍、PDGF-AB濃度で約4.4倍、TGF-β濃度で約3.5倍であった。PRPは、骨芽細胞のDNA合成活性を138%促進させ、上皮細胞のそれを80%抑制させた。歯根膜細胞、歯肉線維芽細胞においてもDNA合成活性の増殖が促進された。さらに培養歯根膜細胞においてPRPはfibrin塊の形成を介してcollagen形成を促進することおよび増殖因子による細胞増殖作用から創傷治癒促進・組織再生効果が期待された。アルギン酸ナトリウムで活性化させたPRPをハイドロキシアパタイト(HA)と混合した複合体を作り、歯周骨内欠損再生及ぼす1年後の臨床効果を検討したところ、ポケット深さの減少および付着レベルの獲得において臨床的に有効であった。さらにPRPはアルカリフォスファターゼ(ALP)活性をあげるが、増殖因子はこの作用がないことを明らかにした。加えて歯根膜細胞の石灰化への分化指標としてCbfal, BSP, OCN, ALPとし、PRP+歯根膜細胞+アテロコラーゲンのin vitroにおける電子顕微鏡所見として石灰化マトリックスの形成を確認した。これよりPRPに含まれる血小板の細胞膜は石灰化の核として作用することを明らかにした。 培養歯肉に関しては、培養上皮シートを慢性剥離性歯肉炎患者に臨床応用したところ、シートから放出される増殖因子の効果により極めて良好な予後が得られた。 培養骨に関しては、気孔率の高いHAブロック上で、PRPを添加した状態で歯根膜細胞を播種した。その結果、回転培養方法を工夫することで歯根膜細胞の気孔内への積極的導入に成功し、高い増殖活性がみられた。 そして最終的総括として、3年間にわたった本研究結果を研究成果報告書としてまとめた。
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