研究概要 |
糖尿病患者は,歯周疾患の発症率が高く,重症であることから,糖尿病は歯周疾患のリスク因子として重要視されてきた。一方,重症な歯周炎に罹患している糖尿病患者は血糖コントロールが悪化することや合併症が糖尿病に悪影響を及ぼしていることも近年明らかになりつつある。さらに,歯周疾患を治療することにより,糖尿病の血糖コントロールが改善されるとの報告もあるが,いまだに確固たるコンセンサスは得られていない。また,歯周疾患が糖尿病に及ぼす悪影響のメカニズムについての詳細は不明である。 今年度も、昨年度に引き続き明海大学歯学部付属明海大学病院糖尿病総合外来受診中の歯周病患者について糖尿病と歯周病の関係について調査,研究した。 そして,以下のような結果を得た。 1)歯周病の各種診査項目と糖尿病の診査項目との関係を検索したところ,糖尿病の罹患年数は、歯槽骨吸収度、BOP陽性の歯の率、平均PPD、および4mm以上のPPDを有する歯の率と有意な相関が認められた。患者の年齢は,罹患年数と有意に相関するものの,平均PPDおよびBOP陽性の歯の割合との相関はみられなかった。本研究対象の2型糖尿病患者は,比較的血糖値のコントロールが良好であったにもかかわらず,糖尿病の罹患年数と歯周病の重症度が相関したことから,糖尿病患者は,発症早期から歯周治療を行うことが重要であると考えられた。 2)インスリン治療を受けている患者(10名)は,受けていない患者(35名)と比較して,BOP陽性の歯の率が有意に高いことが明らかとなった。インスリン治療を受けている患者は,糖尿病が重症である場合が多く,その結果,歯周炎が増強され,BOP陽性の歯の率が高くなっている可能性が考えられた。
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