研究概要 |
スフィンゴ脂質から合成されるセラミドは細胞内シグナル伝達物質として炎症、細胞増殖、アポトーシスに関与することが知られている。本報告は歯肉線維芽細胞に対するセラミドの効果について平成14・15年度の2年間で以下の実験を行った。 1.プロスタグランジンE_2産生 歯肉線維芽細胞に膜透過型C_2-セラミドを作用させプロスタグランジンE_2(PGE_2)量をELISA法により測定した。C_2-セラミドは濃度依存および経時的にIL-1βによるPGE_2産生を抑制した。C_2-セラミド単独では対照とほとんど差がなくPGE_2産生を起こさなかった。またC_2-セラミドのアナログを同様に作用させたが、IL-1βによるPGE_2産生は影響を受けなかった。 2.COX-2mRNA発現 PGE_2産生酵素であるシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)mRNA発現をRT-PCR法により測定した。C_2-セラミド単独では弱いCOX-2mRNA発現が認められ、IL-1βによる発現に対しては増強傾向を示した。C_2-セラミドのアナログではCOX-2mRNA発現に対して影響しなかった。 3.C_2-セラミド以外の効果 C_2-セラミド以外のセラミド(C_6-,C_8-,C_<16>-セラミド)のIL-1βによるPGE_2産生に対する影響について測定した。C_2-セラミド以外のセラミドは、単独ではPGE_2産生を起こさなかった。しかし、IL-1βと同時に作用するとPGE_2産生を増加しC_<16>-セラミドがもっとも強い抑制を示した。 以上の結果よりC_2-セラミドは歯肉線維芽細胞における炎症応答を抑制し、歯周疾患治療における適用が示唆された。
|