研究概要 |
骨シアロタンパク質(Bone Sialoprotein ; BSP)はリン酸化および硫酸化を受けた糖タンパク質で,石灰化初期の骨芽細胞により分泌され,アパタイト結晶形成能を有し石灰化組織特異的に発現することなどから,初期の石灰化において重要な役割を果たすと考えられている。 本研究では,BSPの遺伝子発現機構を検索する目的で,骨芽細胞様細胞(UMR106細胞)を用い,リポポリサッカライド(LPS)およびProstaglandin E_2(PGE_2)のBSPの転写に対する影響を検索した。ノーザンブロットの結果,1μg/mlのLPS刺激(12時間)後にBSPmRNA量が減少した。UMR106細胞をPGE_2(3μM,12時間)にて刺激するとBSPmRNA量は増加した。ルシフェラーゼアッセイの結果,UMR106細胞に導入したpLUC3(-116〜+60塩基対)コンストラクトにおいて,LPS(1μg/ml)により転写活性が抑制された。PGE_2(3μM,12時間)刺激により,pLUC3の転写活性は上昇し,その効果は転写開始点から70塩基対上流に存在するcAMP応答配列(CRE)および90塩基対上流のFGF2応答配列(FRE)を介すると考えられた。PGE_2の作用はEP2およびEP4受容体を介し,細胞内情報伝達系は,Aキナーゼ,チロシンリン酸化,MAPキナーゼ系を介すると考えられた。 ゲルシフトアッセイの結果,FRE結合タンパク質が,LPS刺激12時間後に減少した。以上の結果より,FRE配列を介してLPSによる転写調節が行われていると考えられた。 PGE_2刺激によりCREおよびFRE結合核内タンパク質が増加し,CREに結合する転写因子はリン酸化CREBであることが明らかになった。 以上のことから,LPSおよびPGE2に応答するラットBSP遺伝子プロモーター中の応答配列および転写調節機構が明らかになった。
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