研究概要 |
好中球は歯周組織の歯肉結合組織の末梢血管より遊走し、歯肉上皮を通過し、場合によってはその過程で歯周病の病原因子と出会いながら歯肉溝を経て唾液中に移行する。よって唾液中の好中球(以下唾液好中球)は,遊走,移動の過程で周りの環境から得た,様々な情報を細胞膜,細胞質内に含んでいると考えられる。 本研究の目的は,この唾液好中球を採取し,その細胞から、歯周病の病態に関する各種の情報を比較的簡便に引き出す手技を確立し,好中球という非特異的免疫担当細胞の解析から,歯周組織の病理学的,免疫学的状態を把握する方法の開発を試みることである。 本年度は,唾液中からの好中球の採取,分敵方法の再検討を試みた。すなわち,唾液好中球の形態,機能,生物活性をできる限り損なうことなく回収する方法を検討した。手技の基本は,Ashkenazi Mら(1989)の方法を用い,細胞の回収方法,緩衝液での処理方法等を改良した。その結果,被験者の約30分程度の協力で,Flow Cytometryの解析に必要な,1x10^6個/mlの好中球を回収する方埠が確立できた。また,細胞の生物活性も60%から70%と,従来の方法よりも高い値が得られ,細胞機能検索に有用な方法であると結論づけられた。 現在,次年度の研究への発展に繋げるべく,この方法を用いて,喫煙者,非喫煙者の唾液好中球機能の検索が進行中であり,歯周組織に対する喫煙の影響に関する多くの貴重な情報が得られるものと考える。
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