研究概要 |
好中球は歯周組織の歯肉結合組織の末梢血管より遊走し、歯肉上皮を通過し、場合によってはその過程で歯周病の病原因子と出会いながら歯肉溝を経て唾液中に移行する。よって唾液中の好中球(以下唾液好中球)は,遊走,移動の過程で周りの環境から得た,様々な情報を細胞膜,細胞質内に含んでいると考えられる。 本研究の目的は,この唾液好中球を採取し,その細胞から、歯周病の病態に関する各種の情報を比較的簡便に引き出す手技を確立し,好中球という非特異的免疫担当細胞の解析から,歯周組織の病理学的,免疫学的状態を把握する方法の開発を試みることである。 本年度は本研究の初年度で確立した、唾液中の好中球を形態,機能,生物活性をできる限り損なうことなく回収する方法を用い、遊走能,貪食能,活性酸素産生能,細胞内酵素活性,細胞死,Fcγレセプター,C3biレセプター発現などの項目についての検索を試み、興味ある結果が得られた。具体的には喫煙者の唾液好中球では恒常性のバランスが崩れ、歯周組織の抵抗性が低下している可能性が示された。また、歯周病患者の好中球の諸機能の低下も示され、唾液好中球は生体防御機能の変化を類推するための一指標となり得る可能性が考えられた。
|