研究概要 |
歯周組織再生療法であるGTR法が臨床応用へ開発され、適応症を限定することにより、理想的な治癒を確立することが可能になった。しかし、歯周外科処置を必要とする症例は1壁性骨欠損のような条件の不利な症例が多い。また、他家、他種より採取された生体材料を再生療法に用いた場合、供給側からの伝達性病原体、細菌およびウィルスの受容側への移入の危険性を全面否定することはできない。現在まで我々は、歯根膜由来線維芽細胞の細胞凝集塊(スフェロイド)の作製に成功している。スフェロイドは細胞が3次元形態で細胞集団をなし、球型の形態を有し、スフェロイド内の細胞は分裂、増殖能を保持している。この3次元形態を有するスフェロイドを歯周組織の再生に応用するため、今年度は無血清培地による細胞培養法の確立を主目的とした。 細胞増殖活性測定は細胞成長因子としてrecombinant human platelet-derived growth factor (rhPDGF)、recombinant human bata-fibroblast growth factor(rhb-FGF)を用いた。継代7代目のヒト歯根膜由来線維芽細胞をマイクロプレートに1.8×10^4/cm^2の濃度で播種し、D-MEM(含5% FCS)100μl加え培養を行った。培養24時間後、上記の成長因子を1,10,100ng/mlの各濃度を加えたD-MEM(0% FCS)に交換し、更に1,3,5,7日間培養を行った。また、細胞増殖活性測定にはWST-1を使用した。すなわち、培養1,3,5,7日目の培地を100μlのD-MEM(0% FCS)に交換し、WST-1を10μl加え、90分間インキュベートし、マイクロプレートリーダーを用いて吸光度を測定した。マイクロプレートマネージャーIII/Macintoshを使用して450nmにおける吸光度を測定し,細胞増殖活性の値とした。 その結果、7日目の細胞数はD-MEM(含5% FCS)と比較し各100μl加え培養でrhPDGFは約35%、rhb-FGFは約30%であった。また、5日目ではrhPDGFが約50%を示した。今後、長期培養と他の増殖因子併用により増殖を100%に近づけスフェロイドを作成する予定である。
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